■湯上がり新ちゃん











 別にやましい気持ちがあった訳ではない。

 たまたま、だったのだ。

 ……信じて貰えるかどうか分からないけれど。






「あふぁ……」

 大欠伸をしながら銀時は伸びをした。

 昨夜は下のスナック「お登勢」で遅くまで飲んでいた。勿論ツケだ。

 だいぶ呑み過ぎたようで、吐く息まで酒くさい気がする。

「今何時だ?」

 ぼんやりとした頭で枕元の目覚まし時計を見るともう九時を過ぎていた。

 いつもは新八が八時頃やってきて朝食の支度をしてくれる筈なのに、今日はまだ来ていないのか。

「どうしたんだ?休むって連絡は無かったよなぁ、たぶん」

 腹に手を入れてボリボリ掻くと、よっこらせと立ち上がった。

 とりあえずそろそろ起きて目覚めのコーヒーならぬいちご牛乳を飲むとしよう。

 二日酔いの朝には欠かせないアイテムなのだ。

 自室を出て事務所になっているリビングへ行くが、人の気配はやはりしない。

「………今日は日曜か?」

 いや違う、カレンダーは水曜日だ。平日真っ只中。

「なんだなんだ新八の野郎、無断欠勤か?」

 そう言いながら押入れを開けると神楽は凄い寝相で夢の中だった。

「おい神楽。おめーもそろそろ起きろや」

 そう言って肩を揺するが、びくともしない。

 溜息を吐くとボリボリと頭を掻きながら台所へ向かった。

 バクンと冷蔵庫を開けるとそこから一リットルパックを取り出し、そのまま飲む。

「はぁ…やっぱいちご牛乳は最高だ。これを発明したヤツは神様だな」

 そんなことをブツブツ言いながらパックを空にすると、軽く水洗いしておく。

 後でこれを使ってティッシュボックスを作らねばならない。地球の為に出来ることの一つだ。

「どれ、風呂でも入るか」

 うーんっ…と伸びをして、浴室へ向かう。実は昨夜は風呂へ入らず寝てしまったのだ。

 流石に全身から酒の匂いが漂っているので、すっきりさっぱりしたい。

「ふんふーん♪ふふふーん♪」

 鼻歌を歌いながらガラッとドアを開けると。

「おわ!」

「えっ!新八?」

 白い湯煙の中に湯上りの新八が立っていた。

「あれ、お前なんでこんなとこにいんの?」

「あ、いやこれは……」

「まさか新八………」

「な、なんですか」

「朝帰りじゃないだろうな!俺と言うものがありながら!」

「はぁ?バカ言ってんじゃねーよ、この天パ!」

 あまりにも馬鹿なことを言う銀時に呆れ、新八は盛大にため息を吐いた。

「夕べうちのお風呂が壊れちゃって。お金が無いのに銭湯へ行くのもなんだし、ここで入らせて貰おうと思って」

 そう言うとタオルで体を拭く。

「あ、銀さんも入ります?お湯まだ暖かいから…………どこ見てんです?」

「ん?新八の綺麗な体を見てます」

「見るな!」

「なんで」

「銀さんの視線はなんか…やらしいんですよ!」

 慌ててタオルで大事なところを隠した。

「なに今更隠してるの。もう全部見ちゃったよ」

「う…っ」

「それに前隠しても…」

「あ!」

 流石白夜叉と呼ばれた男。

 身のこなしの軽やかさでは誰にも負けない。

 あっという間に新八の背後へ回った。

「後ろが丸見えだぜ」

「ぎ、銀さん!」

 するりと背後から抱きしめられ、新八は体をすくめた。

「そんなに怖がらなくても…」

「べ、別に怖がってなんかっ」

「そうか?」

 面白そうな顔をすると、銀時は新八のうなじに口付ける。

「やっ!」

「うーん、気持ち良い」

 チュッチュッ

 滑らかで暖かい濡れた肌の感触に銀時はたまらず何度も唇を寄せる。

 そして片手は新八の胸の突起を悪戯し、かと思えばヘソの辺りを彷徨っている。

「銀さん!酒くさい!」

「そりゃおめー、銀さん二日酔いですから」

「自慢になんないですよ!」

 頬を染め涙目になりつつ、銀時の腕の中から抜け出そうとするけれど、強い力で抱き込まれている所為で容易には抜け出せそうに無い。

「あ…そ、そこはダメッ」

 もがいていると銀時の大きな手が新八の大事なところへ触れてきた。

「やめて下さい!」

 よりによって朝からこんなことになるなんて!いくら恋人でも冗談じゃない。

 家の中には神楽だって居るのだ。

しかし新八の抵抗などなんのその。

「やめろと言われても止められないのが悲しい男の性ってね」

「銀さん!」

 大事なそこをきゅっと握られ優しくこすられると、思春期の男子にはそれだけで相当な刺激になる。

「あ…っ…やっ!」

 先端から蜜が零れ、それを銀時の指がぬるりと先の部分へ丁寧に塗りつけて行く。

 もどかしく腰を揺らしたり思い切り前へ突き出したくなる自分を懸命に抑え、新八は己を嬲る男の太い手首を握った。

「もうやめて銀さん…っ」

「こんなところでやめて良いのか?」

「あん!」

 先端へ爪を立てると、新八の体が鮎のように跳ねる。

 それを少し息を乱して見ていた銀時は、愛しそうに優しく抱きしめ新八のうなじへ口付けた。

「こっちも撫でてやるからな」

「も、やだ…」

 勃ちあがったそれから手を離し、下で震える双球をまとめて強く揉みあげた。

「んや!あっあっ!だめ!」

 我慢出来なくて自分の手をそこへ持っていこうとすると銀時の手がそれを軽く払いのけた。

「自分でしなくても俺がやってやるから…」

 そう言うと元から意地悪する気も無かった銀時は、烈しく主張する新八のそこを大きな手で握り素早く上下に扱いた。

「新八、大好き」

「はぁん!」

 その刺激で一気に上り詰め、白い精を銀時の手へ吐き出した。

「おっと」

 ぐったりした新八は背後の銀時に抱きとめられ、そのまま気を失った。

「ありゃ気ぃ失っちまったか」

 銀時はちょっとすまなそうにすると、タオルで手を拭い新八へ着物を着せリビングのソファへ寝かせた。

 火照った頬へ口吻けると、そういえばと思い出し押入れを覗いた。

「まだ寝てやがる…」

 押入れの中では豪快な鼾をしながら神楽が寝ている。

「とりあえず風呂、入るか」

 ボリボリと頭をかくと、浴室へ向った。










「銀ちゃん遅いネ!もう食べてるよ!」

 タオルで頭を拭きながらリビングへ行くと、食事の用意が出来ていた。

「うー、腹減ったなぁ………何コレ」

 銀時の指定席には煮干が三匹乗った皿が一つあるのみ。

「おーい新ちゃん」

「なんですか」

「これなに。猫でも飼うの」

「あんたのご飯ですよ」

「は?何それ新ちゃんまた冗談ばっかり―――」

「はい、神楽ちゃんご飯おかわり」

「アリガトネ!」

 神楽の前には御飯とお味噌汁と卵焼きとたくあんが並べてあった。

「おい新八!新手の虐め!?銀さん泣いちゃうよ!」

「勝手に泣いてろ!良いからとっとと食え!このヘンタイ!」

 頬を染めてぷんぷん怒った新八のささやかな復讐に銀時はほんとに、泣いた。

「せめてポッキー一本にしてよ!」

「ダメです!」

「じゃあ飴玉一個とか!」

「黙れこの糖尿!」

「銀ちゃん酢昆布食べるアルか?」

「いらん!」







 今日も万事屋は騒々しくなりそうです―――。














 END














2005年の冬コミで無料配布したものです。コピー本でした。
そして生まれて初めて書いた銀新でもあります。
とにかくその時は銀新にハマりたてで、本が作りたくして仕方
なかったもので、スペースのジャンルが全く違うのにも関わらず
勢いで本を作ってしまったのです。そして気がつけば立派な
サークル名も付いて本も出せて。至福です!そういえば
この時からすでにお風呂でエッチですな。今気づいた(笑)


(2005年12月29日初出)



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