■香り(あ ま つ き 紺鴇)
男の体ってやっぱりゴツゴツしてて硬いんだ。
鴇はそんなことをぼんやり考えていた。
「おい」
「ん!」
「何考えてやがる」
少し怒ったような声が聞こえてきて、鴇は相手を見た。
結った髪がほつれて、悔しいくらいカッコイイ。
「篠ノ女のことだよ…」
きちんと言ったつもりなのに、喉が擦れて上手く言えなかった。
「嘘つくな。違うこと考えてただろ」
ここをこんなにしてんのに。
低く呟くと、篠ノ女の手に急所を握られた。
「んんっ。…だめ…」
「駄目なのはお前だろ。色事の最中に別のこと考えるなんて余裕あるじゃねえか」
そう言いながら、鴇のそれを上下に扱き、ヌルヌルする先端を親指でぐりぐりと抉る。
「やだっ…それ!」
強い刺激に身を捩ると、篠ノ女が覆い被さってきて、身動きが取れなくなった。
男らしい体臭が汗と混じり、とんでもなく官能的な香りが鴇を包む。
(あ、やばい…かも…)
鴇はこの瞬間に強く香る篠ノ女の香りが大好きなのだ。
少し視線を下にやると、着物の襟元から太い首筋が覗き、そこが汗で鈍く光っていた。
それを見て、もう我慢出来ず鴇は覆い被さる男に思い切りしがみ付いた。
篠ノ女の汗を見て香りを嗅ぐと頭が沸騰したように思考が上手く働かなくなる。
思考が働かないということは、もう本能で動いているということで―――。
汗をかいた熱い体と体がぴたりと密着して、二人の間の空気も追い出し、お互いの体を擦り付け合う。
腰が揺れてしまうのも止められない。
「お前、ホントにエロ過ぎる…」
耳の中を舌でほじられ、耳たぶをしゃぶられ、耳にカサついた唇が押し当てられる。
低い声で囁かれると、脳を通って全身に一気に熱が走り抜け、鴇は自分から篠ノ女の唇を求めた。
「篠ノ女…しの…っんん…あ…」
息が出来ないくらい、そして唇がはれ上がるほどお互いの唇も舌も容赦無く啜り合い、やがてゆっくり離れると、小さく鴇は呟いた。
「好き…」
「俺のほうがもっと好きだ」
囁いた声には、直ぐ答えが返ってきた。
思わず鴇が笑うと「笑うなよ」と拗ねたような篠ノ女の低い声。
「全部大好きだよ…」
熱くて硬い体も、低い声も、塩辛い汗も、男らしい体臭も、闇のような黒い髪も。
―――さっきは、そんなこと考えたんだよ。
鴇のその言葉に一瞬篠ノ女は動きを止めたかと思うと、ゆっくりと身を起こし、鴇を見下ろした。
「俺なんて、そういうことをいつも考えてるぜ」
そう言っていやらしく笑うと鴇の手を取り己の昂ぶりへ導いた。
「ここ、お前が欲しいっていつも叫びっぱなし」
慰めてやって?
その言葉に鴇はおかしなくらい興奮して、導かれるまま手を伸ばした。
まだ夜は始まったばかり。
お互いの熱はいつまでも冷めないまま―――。
END
あまつきでエロって書いたっけ…?と思い、しばらくエロ自体を
書いてなかったのでなんかむしょうに書きたくなって
ペーパーの裏に書いてしまったという(笑)こころならずも
夏ペーパーの裏に書いた「きっかけは〜」の続きみたいな
感じになりました(笑)次はもう少しちゃんとエロシーン書きたい
です(笑)なんであまつきだとエロ書かなくなっちゃうのかしら。
他のジャンルだと結構エロ書いてるんだけど。そういえば最近
18禁本出してないと気付いた冬コミの朝…(笑)あれって準備会
のスタッフさんに確認されるんですよね、エロだと。でもうちは
エロが無かったから「18禁本はありません」と言ったんだけど
自分でそう言っておいて凄い違和感を感じたんだ(笑)おいおい
マジかよ自分!と(笑)なもんで、次はエロ本を出したいです!(笑)
(2011年12月30日初出)
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