■おでかけしましょ  ……[3]











「まぁ落ち着けって。腹減ってるから怒りっぽくなってんだよおめぇ」

 全く反省の色が無い銀時に「このままトンズラするか」と一瞬思ったが、気がつけば映画代も軽食分も奢ってくれている。

 聞けば今日の分はすべて銀時の奢りらしいのだ。

 パチンコで儲かったからと言っていたが、そんなことなら給料出せと言いたい新八だ。

「ファミレス入ろうぜ」

 そういうと銀時は映画館の近くにあるファミレスへ向かう。

「………」

 まだ納得のいかない新八はしぶしぶその後を追った。 

 ファミレスというところは案外デザートが豊富に取り揃えてあるのだ。

 ハンバーグセットを2つ頼み、デザートにチョコレートパフェとストロベリーパフェを頼んだ。

「糖分は定期的に補給しないと生きていけねーよ、俺は」

 そう言いながら銀時は満足そうにチョコレートパフェを口に運ぶ。

「………」

「なんだよ、まだ怒ってんのか新八」

「………」

「そんなんだから新八なんだよ」

「名前は関係無いだろ!」

「お!突っ込みは健在だな、よしよし」

「よしよし、じゃない!」

 いつまでも怒っているのがバカバカしくなってくる。

 新八は溜息を溢す。

「で?この後はどうするんです?甘いものも食べたし、帰りますか?」

「いや、まだ予定はある」

「そうなんですか?」

 もう帰るのならスーパーにでも寄っていこうかと思っていたのだが。

 きょとんとする新八へ、銀時はちょっとだけ視線を逸らし小さく呟いた。

「お楽しみはこれからだぜ」

「は?何ですって?」

 聞き返すが何でも無いと言われ、不思議そうな顔のままパフェの残りに手を付けた。







「あの……銀さん」

「何よ、新ちゃん」

「変な道に入り込んでるんですけど」

「ん?ここで良いんだよ」

「いやでも……」

 ラブホテル街なんですけど。

 なんというか、お約束極まりないが、銀時の道案内で入り込んだのは所謂ラブホテル街だった。

 そう、かつて新八があの猫娘に導かれて歩いた(ちょっとだけトラウマになっている)場所だ。

「なんでこんなとこ歩いてんだよ、あんた!」

「なんでっておめぇ。なんでも何も、あれだよ、あれ…」

「あれって何ぃ!」

「あれはそれでこれだから……ようするにチョメチョメ?」

「そのチョメチョメって何だよ!もう帰りますよ、僕!」

 こんなことにまで付き合わされるなんて冗談じゃない!

 今度こそ頭にきて新八は元来た道を戻ろうとした。

「ちょ…待て待て!そんなに警戒すんなよ!」

「普通するだろ!映画館じゃ痴漢みたいなことするし、今度はこんなところに連れ込もうとするし!」

「だって新八に惚れちゃってるんだからしょうがないだろ!」

「そっ…そんなこと言ったって駄目です!」

 帰るんです!スーパーで買物したほうがマシです!

 そう叫びながら電柱にしがみ付く新八の襟首を掴み、銀時はちょっと困った顔をした。

「そんな怖くないから!痛いことしないし!」

「うるさい!」

「優しくするから!」

「いやだ!」

「こんなに大好きなのに新ちゃん酷い…」

「好きなら何しても良いのか!」

 嫌だ嫌だ絶対嫌だ!

 全身の力を込めて電柱にしがみ付いてしまっている新八は、梃子でも動きそうに無い。

 さて、困った。

 銀時が困ったなぁと頭をボリボリ掻いていると、その肩をポンと叩かれた。

「お兄さん、未成年とこんなところで何やってんだィ?」

 聞き覚えのある声にギクッと後ろを振り向くと、そこには真選組の沖田がいた。

「あ!沖田さん!」

「あらら。これはこれは沖田君じゃないか。そっちこそこんなところで何してるのかな」

「見回りでさァ。最近は良い大人の未成年買春が多くていけねぇや」

 で?旦那は何を?

 そう言われて銀時が詰まった。

「う、いやこれは……」

「旦那ァ、こんなこた言いたくないが………」

「な、何かな」

「…………」

 沖田は新八をチラリと見ると、冷や汗をかく銀時の耳元で小さく毒を吐いた。

「ヤッちまうと【豚箱】行き、ですぜィ?」

「う!」

 下心ありありだったので、銀時は顔が引き攣った。

「まぁ串団子10本奢ってくれたら今日のことは内緒にしますぜィ」

「………」

 それは賄賂というヤツじゃ……と思ったが、口封じの為には仕方が無い。

「それじゃ行きますかィ」

 結局沖田を真ん中に挟んで、銀時と新八はその場を立ち去った。






「もう絶対銀さんとデートなんてしませんからね!」 

 そう言われた銀時は、さらに賄賂(?)でお土産用に団子を20本買わされ、せっかくパチンコで儲けたのに、余るどころか財布がすっからかんになってしまったそうな。

 大人のデートもほどほどに……。










END














「デートは30分前行動」って言ってた銀さんが
印象的でした。あと新八もエロメスちゃんとの
待ち合わせには先に到着してたし。2人とも律儀
だなぁと思ったよ(笑)沖田くん初書き。結構書き
やすい人だなぁ。また出したい(笑)こういうコメディ
は結構パパッと書ける。今度はシリアスな片思い話
にも挑戦してみたいなぁなんて……。


(2006年1月20日初出)



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